私的籠球論 18 激しさよりも泥臭さ
先日、今シーズン(2020~21)初のSR渋谷のバスケ観戦をしに行った。昨シーズンはSR渋谷の試合を見ていて明らかにそれまでのシーズンとは違った動きを見せていた。
昨シーズンのSR渋谷は明らかに動きが激しいのが印象的。よくサッカーで攻撃的なDFというタイプを見るが、SR渋谷の選手は重心の低い激しいディフェンスでペースをつかんでそこからタイムシェアを意識した全員攻撃や5人リバウンドなどサッカーで言う運動量が桁外れに増えた。
そのためベンドラメはそれまでよりも圧倒的に疲れるバスケをしている、と雑誌のインタビューで語っており、しかしそんな負担の大きいバスケでも勝利という最大の良薬がチームの迷いをなくすのかそのバスケで天皇杯優勝につながり、悲願のリーグ戦の優勝も見えてきた。
しかしそんな矢先のコロナ騒動である。当然リーグ戦も中止。個人的にはこんな形で終わるなら、千葉やA東京にボコられたほうが踏ん切りがつくとも思えた。
そうした消化不良のシーズンオフ。コロナ対策の何もかもが手探りの中で進む新シーズン。SR渋谷はスタートダッシュに躓いた。
筆者が観戦した試合前の9試合で3勝6敗。しかしうち4試合は上位陣との4点差以内の惜敗と内容は悪くない。
しかし現場の人間としてはどんな凡戦でも白星が欲しい。前述にあった白星が何よりの良薬といったが、逆に黒星はどんな惜敗でも何の慰めにもならない。とにかくチームとして勝ちたい。そういう焦燥感すら感じる中での墨田体育館の秋田戦のTIP OFFであった。
この日のSR渋谷を見ていて感じたのは、勝利への執念であった。このままずるずる負けが続くとやばい。日本人も外国籍選手もみな理解している。
その追い詰められた空気からかSR渋谷はホームタウンにあるようなきれいなプレーではなく、体を張った泥臭いプレーで終始していた。
とにかくルーズボールもがつがつ追いかけろ。巨体を揺らしてでもボールに食らいつけ。しぶとく諦めない。一見すると格好悪くも見えるこの日のSR渋谷は見方を変えれば高校スポーツのような負けたら終わりのような後がない緊迫感のあるプレーに終始していた。
少し前のSR渋谷のバスケはサッカーで言う守備専のような勝っても負けてもロースコアのような地味な試合が多かったのであるが、HCが変わって、昨シーズンあたりから得点力がUPしてきたように見える。
正直外国出身選手頼みの編成なら、プレーオフには入れても優勝はできない。本当にSR渋谷が日本一になりたいのなら日本出身選手の技量の向上が不可欠になる。
そういった要素の中で外国出身選手が主力であった秋田に対して、この日のSR渋谷は日本人の得点力が光った。
昔ジェフでオシム監督が監督をしていた時は、得点力はUPしてもチームに得点ランキングに名を連ねる選手はいなかった。それだけ全員サッカーで特定のこの力に頼らず、選手が怪我しても替えが効く理想的なサッカーをしていたのがわかる。
個人的にSR渋谷に目指してもらいたいのはである。そうしたような今の全員バスケである。
それに付随してこの日の秋田戦でやっていたような、激しさに加えた泥臭い体を張ったバスケである。
今のSR渋谷に必要なのは、洗練された大人のプレーより高校球児のような我武者羅なプレーかもしれない。