私的スポーツビジネス論 19 ファン向きな人。フロント向きな人。
唐突なタイトルであるが個人的なスポーツビジネスに適した人材論について言及していきたい。
筆者自身若い頃は何でもいいからスポーツの現場で働きたいと考えていた輩である。
今、逆の立場から言えば一番チームにいらない立場の人間でもある。若い頃の自分は選手としてもダメ。指導者も向いていない。フィジコも挫折。外国語も(しゃべることはできても)仕事にするのは無理。運営もダメ。
つまり何から何まで全部ダメな存在であった。
最近になって分かったことであるが、スポーツが好きな人というのはスポーツを仕事にしないほうがいいということである。
昔、小学校の職業図鑑である板前の人が言っていたが「本当の食いしん坊は料理を純粋に楽しめなくなるから、料理人にならないほうがいい」という言葉があった。
職に人一倍旺盛な筆者はその言葉に妙な恐怖心を覚え、結局飲食関係ではない仕事で生計を立てている。
話をスポーツに戻すが、そのスポーツの球団職員になるということは、競技をしている間は仕事をしていないといけないから、むしろ試合を楽しめなくなるし、楽しんでもらっても困るのである。
そういう意味でフロント向きな人間というのは、その競技が好きでも嫌いでもないような中立の立場の人間で、なおかつ一般企業で何千万円の予算の仕事が回せるような人のほうが適性がある。少なくとも大学のスポーツビジネス学科を卒業したての若い人間に務まる仕事ではないのである。
出はスポーツが好きな人というのはスポーツの世界で存在価値がないのかというのかと言えばそんなことはない。
自分の存在もひっくるめて言うのだが、スポーツ好きの人間というのは、一般企業で働き、自分の仕事で利潤を生みだし、その利潤を球団(クラブ)に還元したほうが、現実逃避をしながら、現場で役に立たない球団職員になるよりかよっぽど存在価値が高くなる。
以前ある女子大生が海が自分は好きだけど、仕事と趣味は別にして、就活は海と関係ない仕事に就きたいと言っていたが、今考えてみるとその娘の考えていることは正しい。
実際問題フロントになる人材というのは、なりたくてなる人間はほとんど存在せず、日本の場合、ほとんどが親会社からの出向になる。
こういう人たちはビジネスマンとしては優秀なのだが、早く親会社の出世ルートに戻りたいと考えて、本腰を入れてフロント業務に携わってくれないという問題点もある。
もしくはそのチームのサポーター集団が自身のチームの親会社が撤退となって、クラブの代表に白羽の矢が立つというケースもある。
どちらのケースにしろ毎月何千万円というキャッシュフローを要求され、シーズンオフになると契約満了という名の解雇通告をして、トレードやレンタル移籍といった人身売買のような、ある意味やくざな仕事をしなければならないのである。
好きなスポーツをしながらお金がもらえるみたいに考えさせる中身の薄いスポーツビジネス学科の大学も多いが実際のスポーツビジネスというのは血で血を洗う修羅の道である。
正直に言って筆者自身若い頃はスポーツビジネスにあこがれていたし、今でもこうしてブログに書いているぐらいこの世界には興味があるが、現実問題としてスポーツビジネスの仕事には適性がない。
筆者自身はフロント向きなのではなく、ファン向きの人間なのである。自分の適性を見誤ると人生が不幸になる。自分がファン向きかフロント向きか見定めるのは重要なことである。