私的籠球論 19 価値観の違いが利潤に生む
冒頭のタイトルはある起業家の言葉であるが、実際のスポーツ界にも使える言葉なので引用させていただいた。
筆者が働いている会社で昔高校生の実習生が来たことがある。そいつは日本人とアメリカ人のハーフでバスケット選手だと言っていたので、みんな190㎝くらいの屈強な大男の黒人が来ると思っていたが、来てみたら163㎝くらいの白人であった。
みなバスケをやっているというので勝手な妄想をしていたのだが、じぶんはポイントガード何でと言われて拍子抜けした。
当時筆者は合併前のbjリーグを見に行ったばかりだったので、そのTシャツを着て会社に行ったところ、その実習生は横浜出身で「(横浜)ビーコルセアーズの試合は見る気がしない」と言っていたのを覚えている。
その実習生の実習期間が終わった後に筆者は別の機会で新潟でBリーグの試合を見る機会があった。
そしてその試合も相手は横浜であった。
筆者は会場で試合観戦をしていたが、正直言ってしょっぱい試合であって、このままだと横浜は厳しいなと思わざるを得なかった。
しかしその一方で新たな発見もあった。そうしたBリーグの会の球団にも横浜ファンのブースターが20人くらい客席にいて応援をしていた。
そうして試合を見た後、筆者はその日のうちに帰郷して、それから数日後に休暇も終えて仕事に復帰した。
今回そうした横浜のバスケファンがわざわざ上越新幹線を使ってまで試合の応援をしていることを、横浜の本拠地である横浜国際プールの近くに住んでいる会社の後輩に伝えた。
するとその後輩は「そんなにその球団については知らないけれども、わざわざ新潟までいるなんて熱心なファンもいるのですね」と答えた。
筆者自身は横浜と何の縁もゆかりもないが、こうした一連の流れを見て感じたのが冒頭のタイトルにある「価値観の違いが利潤を生む」である。
周知のとおり横浜は日本屈指の大都市だ。当然メジャーなスポーツであるバスケ経験者も多い。古くからプロ野球などプロスポーツの歴史も長い。
しかし、その一方で失礼ながら、横浜ビーコルセアーズはなかなか上位には上がれない残留プレーオフの常連のチームでもある。
よく目の肥えたNBAファンにはBリーグは草バスケだ、と否定するバスケファンも多い。
しかしその一方でしかしそんな弱小チームでもずっと見守る熱心なファンもいる。横浜市内でもっと楽しい娯楽があるにもかかわらず、それを捨ててわざわざ新潟まで地元のチームを応援しに行く。
同じ横浜のバスケファンでもかなり価値観は違う。まさに十人十色だ。
スポーツビジネスを考えるうえでこうした十人十色な価値観の違いというのが、プロスポーツを現金化するのに必要な要素になってきているように感じる。
一方は地元でも見に行く気がしないという人もいれば、もう一方では貴重な金と時間を割いても弱小でも地元のプロバスケチームを支えたいと思う人もいる。
筆者が言いたいのはどちらが正しいということではなく、こうした価値観の違いというのが今の日本で言われている多様性にもつながり、日本の中で今までとは違ったスポーツ文化の萌芽につながると思う。
片方が見る気があって、片方がない。正直最初は観戦する気が薄くても、言葉は悪いが徐々にそうしたバスケ細胞を持ったファンというのが、周囲に影響を与え、バスケの密度を濃くして、そこから新しいプロスポーツ文化というのが生まれる。
価値観の違いから利潤が生まれるのは時間がかかるがこうした一人一人の小さな価値観の違いがいずれ大きなうねりとなって芳醇なスポーツ文化の熟成につながる。
時間がかかることであるが、日本のプロバスケの将来が楽しみな感じがする。