私的スポーツビジネス論 10 GMはストレスの溜まる仕事
筆者のブログもサッカーとバスケを中心にしたスポーツビジネスのブログを細々とやっている。そうしたうえで筆者自身若いころはスポーツビジネスという仕事ややそうした仕事での現場の責任者であるGM(ゼネラルマネージャー)という仕事には憧れを抱いたものである。
しかしそうしたGMという仕事の中身をよく理解していなかったり、スポーツを仕事にすれば、なんとなく楽しいことの連続であろうという甘い考えを持っていた時代というのもあった。
しかし実際の仕事で言えば、GMという仕事ほどストレスの溜まる仕事もざらにはないように感じる。そうしたことを今回のブログにしたい。
GMという仕事をどういう仕事かと端的に表現すれば「限られた予算でチームを勝利に導きだす」ことが至上命題である。
しかし野球やバスケのようなスタッツで選手の評価が分かりやすい競技になると、防御率やオフェンスリバウンドといった重要な数値の高い選手は当然値段は高くなる。
チームのオーナーや経理部といった財政面で財布のひもを握っている部門の人間からは予算を少なくしろと圧がかかり、ファンや強化(編成)部門からはもっと予算を増やせとこれまた圧がかかり、GMというのはこうした二つの組織から板挟みになるような中間管理職のような厳しくストレスの溜まる仕事である。
チームが勝てる等になると嬉しいこと続きなのかと言えばそうは事は単純ではない。
プロ野球選手でも誰とは言わないがチームが好成績を残すとシーズンオフの年俸調停で決まって金のことでごねる輩というのは必ずいる。
こうしたチームと選手(+代理人)の年俸調停で分かりやすいのはプロ野球漫画『グラゼニ』であろう。一筋縄ではいかない大人のカネの問題がよくわかる。
こうしたカネのこじれというのは別に日本のプロ野球だけの問題だけではない。他の競技でも同様だ。
GMとは少し違うのだが筆者が関わっていたボクシングの話をしたい。
ボクシングのマッチメークというのはファンが妄想をする分においては楽しいのだが、実際にマッチメークをする側としては骨の折れる仕事である。
ある世界ランカー(世界タイトル挑戦権有資格者)がいたとして、日本国内で試合をさせようとすると相手からすればアウェーだから、ファイトマネーを吹っ掛けたい。
そこで俺はランキングに入っているから並の選手とファイトマネーを一緒にするなと相場を吊り上げ交渉する奴もいる。
ほかにもかませ犬として呼んだ選手が勝ってしまって新王者になってしまう。負けた日本人の前王者としてはリベンジしたいので是が非でも再戦したい。
しかし勝った側からすれば今は自分の腰にチャンピオンベルトがあって、自分が王者だ、これまた相場よりも高値を吹っ掛けてごねる奴もいる。
しかしどちらのケースでも興行に対する予算というのは決まっているので、足元を見すぎて交渉が決裂するというマッチメークの不調は古今東西いくらでもある。
これは格闘技のみならず集団で行う球技でも同様のことであろう。ある高レベルの選手がいたとして、その選手がいればチームの弱点は解消できると分かったとする。
しかしそういう選手は基本的に年俸が高額で前述のチャンピオン同様に金のことでごねる。
GMとしてはチームの強化としては欲しいけれども、財政面ではもっと安い選手にしないといけない。
GMはこうした妥協案を模索しながらチーム編成を模索する。
そしていい選手でも金銭面で折り合いがつかず、契約を見送った選手というのはどんな競技でも星の数ほどいる。
今回はこうしたGMという仕事が楽しそうな仕事に見えて実は骨の折れる仕事だということを紹介した。
今後もこうしたことは随時発表していきたいが娯楽を仕事にするというのは実は大変厳しいことなのである。