私的蹴球論 23 移籍も転職も万能薬ではない
私事で恐縮であるが、先日筆者は通っている病院を一回変えることになった。
前の病院自体は全然いやではなかったが、仕事との兼ね合いで最初通うことが困難になってきたので、紹介状を書いてもらったうえで、隣の平日夕方にも空いている病院に移ろうとした。
しかしその移った病院というのが、土曜の朝に行ったにもかかわらず、2時間近く待たされた上に、肝心の医者も感じの悪い男で、この病院で治療を共にすることはできないな、と悟った筆者は結局もう一回紹介状を書かせて元のさやに納まった、という次第である。
えっ?結局何の話がしたいかって?単なる病院の出戻りのはなしじゃねぇーかって?
そう言ってしまえばそれまでの話なのであるが、今回の病院の移動の失敗というのがどっかで聞いた話だなって思ったのである。
それはズバリ、サッカー選手の移籍に似ている。もっと言えばジェフ千葉の選手の移籍の出戻りの話に今回の病院の出戻りがかぶって見えるのだ。
筆者も10年以上ジェフの移籍の話を見聞きしているのであるが、移籍する選手というのはジェフに限らず、どこのクラブでも乞われて移籍するはずである。
そういう時に選手は自分は元のチームで先発出場してこれだけの活躍をしていた。今度移籍するチームには、もっと活躍する場があるであろうし、給与もその分増えるであろうから、収入も増えて、J1で露出も増えて日本代表にも選出されるかもしれない、という青写真を描いて彼らは新天地へ羽ばたいていくのであろう。
しかし人生というのは、思い通りには事が運ばないものである。移籍して1年たって監督が代わる。
監督が代わればそれまでレギュラーだった選手も、控えや新人と同列になって特別扱いは全くなくなる。むしろ新監督は自分の子飼いの選手を他のクラブからとってきたり、新卒の選手を重宝したがる。
そうなると必然的に前の監督に乞われた選手というのは居場所をなくしてしまう。
こうした内部の動きというのは、得てして外からの表面的な部分しか見えていない選手には全体像というのを把握しづらいものだ。そう、ネットなどの情報だけで病院を選んでしまう自分のように・・・。
そうして新しいチームの内部に入って、初めてチームの内情を知り、実は自分は元居たチームのほうが自分本来の実力を発揮できるということに、遅まきながら気づくのである。
こうして筆者が二度も紹介状を書いてもらったのと同様に、ジェフの選手も他の移籍先から古巣に復帰するというパターンがこの十年間往々にしてある。
前いたチームが嫌になって飛び出したが、移籍先で現実を知り、これなら元居たチームのほうがよかったと嘆くのは本当によくある話だ。
今書いている話でよくあるのが、転職サイトのことである。転職サイトというのは当然顧客に転職させてナンボの世界なので、転職すれば仕事の悩みはきれいさっぱり消えてなくなるかのような口ぶりで転職を勧める。
しかし転職したところで仕事の悩みは無くならないであろうし、転職して気づくことと言えば前にいた職場がいかに恵まれていたということである。
しかしそれに気づいてももう元には戻れない。仕事を変えるのは常に一方通行の世界である。
筆者の場合ちゃんと仁義を切っての転院だったので、比較的すんなり元のさやに戻れた。
ジェフの選手も出戻り自体は比較的に容易に帰っていける部分もある。
しかし仕事を考えるうえで転職を考えている間は、自分の会社の悪いところばかりが見えてしまうが、出ていくと今度は良かったところが見える。
だから転職を考えている皆さん。今いる職場が苦しくても安易に離れることは避けた穂がいい。逃げてもいいけど安易な逃げ道は自分の人生の墓穴を掘ることになるのでご用心。