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私的蹴球論 43 欧州は理想郷ではない

日本のサッカー界もそれまで好事家の楽しみであった特殊な世界から、メジャーな娯楽になってから、もうじき30年近くになる。

今までは一部のサッカー専門誌にマニアックな情報源としてでしか載っていなかった、欧州や南米のサッカー界も今や一般紙やSNSやネットで情報が洪水のようにあふれて、当たり前のように欧州サッカーの知識も入ってきて、サッカーという競技が日本社会に市民権を得られたように見える気がする。

しかし、その一方で日本のサッカー界が欧州や南米の社会に対して、未だに上っ面な表面的な考え方に終始している部分もあるように見受けられる。

その例がスペインである。よくバルサやレアルのサッカーは素晴らしいという記事は多くあるものの、スペイン自体失業率という意味では日本よりはるかに高く(スペイン16.2%、日本3.0%)、若年層の失業率で言えば、その差はより顕著に表れる(スペイン40.4%、日本4.2%)。

そもそもスペインという国自体フランシスコ・フランコ独裁政権が彼の死をもって1975年に終わるまで民主化ができずに、近代化という意味でも他の欧州各国に比べて遅れている国である。日本のサッカーメディアはそうしたスペイン内部のネガティブな部分を見ようとはしない。

またよく日本人は欧州を一括りにする傾向にあるが、同じ欧州でもイギリス(英国国教会)・イタリア(カトリック)・ドイツ(プロテスタント)・ロシア(東方正教会)と同じ欧州でも信仰する宗教も言語も異なるので、一つの欧州と考えるのは無理がある。

歴史的に見ても、宗教と歴史と個人の欲望によって国境が塗り替えられてきた経緯がある。昔の日本人経営者で「欧州の歴史は分裂と統合の繰り返しだ」といった人がいたがそのとおりである。

逆に言えば、欧米人してもアジア人というが、同じアジアでも日本と中国・インド・中東では同じアジアでも価値観が全然違うのは周知のとおり。欧米人が日本やアジアを理解していないように,日本人もまた欧州を理解していないし,理解しようともしていない。そしてサッカーメディアもまた、そうした本質的な部分の追及をしようとしない。

なんとなく欧州は素晴らしい、欧州は日本にはない理想郷だと繰り返す。それではサッカーの本質には近づけない。

よく欧州の人間で「自分の国もサッカーはあるが、日本のJリーグのほうがすぐれている.スタジアムも衛生的で清潔.暴動もないし落ち着いて試合を楽しめる」という話は多い。劣悪な環境と暴力の多いサッカースタジアムも欧州には少なからずある。日本のサッカーメディアはなんでも欧州というが、欧州が理想郷というわけでもないのである。

今回は日本のサッカー界に多い「欧州原理主義」について考えてみたわけであるが、勿論欧州のほうがプレーの水準は高いし、サッカーの現金化も進んでいる。しかしすべてにおいて欧州が日本より優れているわけではないのだ。