サッカー&バスケビジネスのブログ

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私的スポーツビジネス論 14 「好き」を仕事にするリスク

今回のテーマはスポーツビジネスのみならず娯楽で身を立てている世界全般に言えることなのでとりあえずご清聴願いたい。

筆者自身大学を卒業した後、格闘技を中心としたスポーツビジネスで飯を食っていきたいと考えていたし、今でもそういう憧れを持っている人の気持ちは骨身にしみて理解できる。

しかしだからこそそうした「好き」を仕事にするリスクというモノを今一度考えてもらいたいと思う次第である。

娯楽を飯の種にするという意味で大変なのは色々あるが、一番大変なことの一つに「替えが効かない」ということが挙げられる。

よく芸能界で働いている役者の人たちは親の死に目に立ち会えない、というくるしみがあるのだが、芸を仕事にすると、基本的に代役がいないこと前提に仕事の話がすすむので華やかな世界とは裏腹に40度の高熱があっても健康体の時と同じクォリティーの仕事を要求されるという意味でハードな世界であるといえる。

今年の夏も酷暑であったが、サッカー選手も人の子であるので過酷な日程のなかでコンディショニングをしなければならないが、その一方でやはり人間なのだから体調を崩すときは崩す。

そうなると先ほどの話と矛盾するのだが、自分の立場を奪い取ってのし上がろうとする人間も無数にいるので病欠で休んでいる間というのは役者であれサッカー選手であれ気が気でないのであろう。

そしてその話にもつながるのだが、芸事で食べていきたいという人間は履いて捨てるほどいるわけだから、今現在の自分の処遇に不満を持っていても雇い主サイドから見れば「嫌ならやめてもいいよ。君の代わりは沢山いるから」と交渉の席で不利な立場になることは多い。

サッカーで言えばサッカー監督という身分に保証というモノは全くなく成績不振ならあっさり解雇されてしまう過酷な職業だ。

そこまでならこのブログを読んでくれている人なら常識であろうが、Jリーグの監督というのは2回失敗したらどのクラブの監督にもなれずに干されてしまう世界なのである。そうなったら40代50代でも一般の仕事に入らないといけないのである。

最近ネットで有名な話とすれば、元鹿島アントラーズの監督でJ1優勝、クラブW杯準優勝という過酷なサッカー監督で勝ち組の石井正忠氏は現在鹿嶋市の学校給食センターで新人からスタートしていることだ。

石井氏自身想うことがあっての転職かもしれないが、サッカーを仕事にしても生涯サッカー界に食わせてもらえる保証はどこにもないということである。

あとサッカーを仕事にすれば夏休みというモノも稼ぎ時なため休みがないし、それに対する処遇の改善も「嫌ならやめろ。替わりはいる」となる。

また企業に雇ってもらえているわけではないので福利厚生という部分でも見劣りがするし、好きなことを仕事にする喜びにも飽きてしまうものである。

先日聞いていたラジオでも投稿で「デザイナーをやっているが残業続きで神経がすり減ってきた。隙を仕事にする喜びも枯渇してしまったし、デザインはもう休日の趣味にして全く関係のない仕事への転職を希望しています」とあった。

サッカーであれ、役者やデザインであれ、「好き」を仕事にするというのは一生続けらる保証はないうえに意外とメリットもないハイリスクローリターンな世界なのだ。