サッカー&バスケビジネスのブログ

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私的スポーツビジネス論 6 村田諒太を想う・・・

先日の金曜日(2019年7月12日)大阪で行われた、ボクシングWBA世界ミドル級タイトルマッチがあった。結果はご存知の通り村田が圧勝のKO勝ちでリベンジを果たすとともに世界のベルトの奪還にも成功した。

このブログは基本的にサッカーとバスケのブログなので格闘技のことは書かないようにしている。ましてやボクシングの技術論に対しては言及する気は更々ない。

しかし今回の村田諒太のリベンジの陰で実は追い詰められているボクシングビジネスの裏側というのを、スポーツビジネス論の一環として表現してみたい。

最初にも言ったように今ボクシングビジネスというのはある意味で瀕死の状態である。村田諒太は凄かったではないか、と思う人もいるかもしれないけど、それが村田の場合ロンドン五輪金メダリストという別格の存在であることを忘れてはいけない。

今のボクシング界で単独で客が呼べるボクサーは村田諒太井上尚弥井岡一翔くらいで、先日の世界戦でセミファイナルで戦った拳四朗は防衛回数も多いのに、知名度がないのでテレビ放映なしの単独での世界戦開催ができないでいる(今回はテレビ付きだったが)。ボクサーにとって究極のゴールである世界王者になっても扱いが低いという現実。これがボクシングビジネスの「終わりの始まり」ではないのだろうかと推測する。

今のボクシングビジネスの弱体化は2010年代初めからうすうす感づいていた。

ボクシングビジネスというのは基本的にテレビ局の放映権料頼みのビジネスモデルなのである。テレビ抜きで単独の世界戦開催というのは個人の零細ジムでは不可能な大金が動く世界である。

しかし今このテレビというコンテンツが大変厳しい状況にある。ネット動画のコンテンツと比較してテレビ番組のコンテンツが相対的に劣化してしまい、テレビの集客に苦戦しているのが現状である。

そのため1990年代のころほど世界王者になれそうなボクサーを育てる余裕がテレビにもなくなってきたのも事実だ。

筆者も基本的にスポーツビジネスのブログをやっている身である。スポーツにおける収益にどんなものがあるのかは多少は知っている。

①チケット収入、②放映権料、③マーチャンダイジング(物販収入)、④スポンサー収入、とある程度健全なスポーツビジネスの世界なら、この4つの収益を均等に得られるように努力しているのである。

しかしボクシング界は長らく②の放映権料に依存しすぎた構造が続いてきた。経営努力をせず、テレビ局に媚びを打っていけば何とかなるという甘えの構造に胡坐をかいてきたツケが来始めてきている。

そうしたうえでの次世代が育たないことも問題だ。村田の試合の前座でロンドン五輪銅メダリストの清水聡がフィリピンの中堅にまさかの初黒星。バンタムからスーパーフェザーのフィリピン人は無名の中堅クラスの選手でも腕利きがゴロゴロいる。これによって日本のボクシング界は数少ない将来の看板選手を失ったことになる。

今回村田諒太のリベンジの陰で、瀕死の日本ボクシング界についていろいろ書いてみた訳であるが今の日本のボクシング界のどん詰まりははっきり言って身から出た錆である。

村田諒太にせよ井上尚弥にせよ人間である。人間である以上必ず衰える。彼らが衰えて引退した後に次世代が育たないボクシング界の末路は哀れなものになるだろう。